八王子市夢美術館では、大正時代の出版文化の発展を支えた作家たちの作品を紹介する展覧会「大正イマジュリィの世界」が開催されています。装幀や挿絵、ポスター、絵はがき、広告、マンガ、写真など、当時の人々に親しまれた多彩な印刷物や版画を通して、大正という時代の美意識に触れることができます。
「イマジュリィ(imagerie)」とは、フランス語で「イメージ図像」を意味する言葉です。明治から大正にかけて、西洋の新しい印刷技術が導入され、書物は和装本から洋装本へと変化し、多様なマスメディアが誕生しました。そうした時代背景のなかで、藤島武二、杉浦非水、橋口五葉、竹久夢二、高畠華宵、小林かいちなどの個性豊かな作家たちが、アール・ヌーヴォーやアール・デコの様式を取り入れながら、洗練されたイマジュリィの世界を築き上げていきます。
なかでも私が特に心を惹かれたのは、日本近代グラフィックデザインの先駆者・杉浦非水(1786〜1965)です。
三越呉服店のポスターやPR誌などを手がけた非水の作品は、100年以上前とは思えないほどモダンで洗練され、今見ても新鮮な魅力にあふれています。
日本画で培った写生を基礎に、西洋のデザイン様式を巧みに取り入れながら、独自の美の世界を築いたことがよく伝わってきます。
非水の作品を見ていると、写実性を大切にしながら自然の美しさや生命感をデザインへと昇華させる表現に、若沖さんの拓版画『玄圃瑤華』に通じるものを感じました。
非水の作品に惹かれたのは、若沖さんのデザイン哲学とどこか共鳴するものがあったからかもしれません。
近代日本のグラフィックデザインの原点ともいえる作品の数々に出会える展覧会です。大正時代ならではの美意識やデザインの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

【大正イマジュリィの世界】
場所:八王子市夢美術館
会期:2026年8月30日まで