京都の堀川今出川にある「西陣織会館」では、「西陣織の輝き ―秀吉の好んだ黄金の世界」が開催中です。
「西陣織」とは、京都の西陣で生産される先染めの紋織物の総称で、昭和51年(1976)に国の伝統的工芸品に指定されています。
西陣織会館では、西陣織の歴史や製造工程、織機のしくみや時代ごとの織物が紹介され、下絵の作成や織機による実演なども拝見できます。
着物の帯や茶入の仕覆、敷帛紗など、お茶を通して西陣織の品に触れる機会はありますが、それらが高い技術と幾多の工程、そして多くの手間をかけて作られていることを知ると、これまでとは見方が変わってきますね。
「西陣織の輝き」展では、金箔糸や金糸を織り込んでつくられた、さまざまな織物が展示されています。金箔糸とは、金箔を貼った和紙を細く糸状に裁断した糸。金糸は、金箔を芯糸に巻き付けた糸。そして、「金襴(裂)」は、主にこの金箔糸や金糸を緯糸の間に織り込んだ織物を指します。
江戸時代中期の祇園会の金襴水引や、江戸後期の金襴裂を集めた織物裂帖のほか、明治から昭和にかけての金襴の着物や帯など、さまざまな時代の織物を見ることができます。
金糸の見本糸もありました。金糸に使われる金箔には、金のほかに微量の銀や銅も配合されており、金の含有率によって色味に違いが生じます。金の含有率が高いと赤みを帯びた落ち着いた輝きになり、少なくなると青みを帯びた輝きになります。
金含有量が97%の金糸(金箔1号色)と、94%の金糸(金箔4号色)を比較すると、たった数%の違いですが、その色味はかなり違っていました。1号色は、少し銅色に近い黄金色。4号色は、一般的にイメージされている黄色味の強い黄金色でした。ちなみに、江戸後期は、金含有量の少ない金襴が流布していたようです。
館内には、フランスのリヨンで製造され、明治時代に日本に持ち込まれた鉄製のヴェルドール式ジャカード機や、それらをもとに日本で造られた木製ジャカード機も展示されていました。
それまでの日本では、機の上部に空引をする人を配置して、その人が経糸を引き上げ、それに合わせて下の織手が緯糸を通す「空引機」が使われていましたが、ジャカード機の登場によって、より複雑な文様を織ることができるようになり、絹織物の大量生産も可能になったとのこと。
リヨン製のジャカード機を前にして、以前訪れたリヨンの「織物装飾芸術博物館」のことを思い出しました。そこには、古い時代のジャカード機や、古今東西の絹織物が展示されていたのですが、印象的だったのは、若冲さんの「枡目描き」と同じく、絹織物の下絵に用いる方眼に着想を得て描かれた絵画が2点展示されていたこと。
一つは草花図(1803〜1805年制作)、もう一つは男性の肖像画(1910年制作)。
どちらも本紙に方眼を引き、それに沿って色を塗り分けてモチーフを形成していましたが、若冲さんの枡目描き代表作「白象群獣図」に見られるような、一つの方眼の中に規則的に小さな方眼を組み込み、明度や彩度を考慮して構成する、複雑なモチーフ表現ではなかったです。
若冲さんの枡目描きは、リヨンの枡目描きよりも半世紀〜1世紀半ほど前に制作されたのですから、さすがです☆
とはいえ、西陣と同じく絹織物の産地であるリヨンにも、方眼の下絵をアイディアベースに描いてみたいと考えた画家がいたことがわかり、大変嬉しかった記憶があります。
西陣織会館を訪れたことで、またリヨンに行きたくなりました☆
◎「西陣織の輝き ―秀吉の好んだ黄金の世界」
場所:西陣織会館(京都)
期間:〜10月25日(日)まで
◎リヨン織物装飾芸術博物館
場所:34 Rue de la Charité, 69002 Lyon, France