展覧会

「エド・イン・ブラック展」で「黒」の美しさと、若冲さんの拓版画の素晴らしさを再確認しました

板橋区立美術館では、「エド・イン・ブラック」巓が開催中です。

江戸時代の“黒”に注目して、絵画や版画、浮世絵などに見られる「黒の表現」が特徴的な作品が展示されています。

江戸時代の「黒」の傑作といえば、若冲さんが50代前半に手掛けた「乘興舟」と「玄圃瑤華」が挙げられます。

いずれも、“拓版(正面刷り)”と呼ばれる、中国で石に彫られた碑文などを写す拓本の技法を木版で行ったものです。

江戸中期は中国趣味が流行し、背景を黒く塗り込み、文字と絵を白抜きにした拓版形式の版本や図譜も誕生しました。

若冲さんの手掛けた「乘興舟」は、単なる白と黒ではなく、グレーの複雑な階調によるグラデーションが多様された、他に類を見ない表現です。

「乘興舟」は、自身の大作「動植綵絵」を相国寺に寄進した後の明和4年(1767)、52歳の若冲が交友のあった禅僧・大典顕常とともに京都の伏見から大阪までの淀川下りをした経験をもとに制作されたもので、長さは11メートルを超える巻物です。ところどころに大典の短辞が記され、手元でたぐりながら、川下りの情景を眺めた人たちは、この叙情的で幻想的な景色にため息がでたことでしょう。

会場には、若冲さんの「乘興舟」のアイディアソースになった可能性もある「雁山霊勝図」(中国・明〜清代/17世紀)も展示されていました。

「乘興舟」と同様に長細い巻物で、冒頭に白抜きの題字があり、文字と絵によって、中国浙江省にある雁蕩山の名勝が描かれています。

若冲さんの手掛けた「玄圃瑤華」は、草花と昆虫とを組み合わせた48図が冊子形式にまとめられたもので、大胆な構図やトリミングの妙、生き物の生命感や躍動感を感じさせる彫りの技術の確かさなど、どの図もうっとりするほど美しく、幻想的です。ここにも、若冲さんのデザイナーとしてのセンスの良さがよく表れています。

一言で“黒”といっても、それはカラーチャートの「黒」ではありません。

漆のような深い黒、暗闇の中の蠢く黒、艶々した羽毛や羽を持つ生き物の黒・・。

自然界に存在するさまざまな黒が身の回りにあり、黒のバリエーションを熟知した江戸時代の人々だからこそ、魅力にあふれる黒の作品が生まれたのでしょう。

若冲さんの時代に発展した黒の世界を堪能できる黒の展覧会、おすすめです。

桜がすでに咲いていました。こちらも見頃!

「エド・イン・ブラック」巓
会場:板橋区立美術館
期間:2025年4月13日(日)まで

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