東京美術倶楽部で昨日、今日の2日間、開催だった「京表具展」に行ってまいりました。
京都といえば、言わずと知れた美術・工芸の街です。
長らく京が置かれ、古くから芸術や宗教の中心地で、伝統的な仕事をされる職人さんも多くいらっしゃいます。
もちろん、表具屋さんのレベルも大変高く、文化財の修復などの高度な仕事を請け負う方も多いです。
平成11年から6年かけて行われた伊藤若冲の畢生の大作『動植綵絵』三十幅の本格的な修復事業では、修復作業をされたのも、京都の有名な表具屋さんです。
この平成の修復で、若冲の『動植綵絵』には、細かな裏彩色が施されていたことが発見され、話題になりましたが、修復に採用されたのは、絵絹の裏に施された彩色を保護するためにも、多量の水を使う通常の方法ではなく、「乾式工法」という水を極力使わない方法だそうです。
この工法は高度な技術を必要とするそうですが、高い技術を持つ表具師がいたからこそ、あの『動植綵絵』の修復が可能だったとも言えます。
「古美術 景和」でも、伊藤若冲の表装をお願いしているのは、京都の表具屋さんです。
若冲の作品は、いろいろなご縁で、私のところに来るまでに、200年から250年は経っております。
この長い期間に、若冲作品を所有されていた方々が、いろいろな想いで、表装をされたり、扱ったりしているのが分かります。
大変、素敵で上質の表装が施され、本紙の状態も良い若冲作品を見ますと、「ああ、この作品はこれまで、とても大切に扱われ、引き継がれたのだなあ。よかった、よかった」と安堵します。
一方、あまり丁寧に扱われなかった様子が見て取れる作品を見ると、「かわいそうに」と思ってしまいます。やはり、どの作品も「よかったね」と思える状態であって欲しいものです。
若冲作品をこれから何百年、あるいは何千年先の後世に引き継ぐためにも、先人から私にバトンタッチされたこれらの作品をきちんと修復し、作品にあった表装をして、作品への愛情と一緒に次の所有者にお渡しすることが大切、と感じております。
そのためにも、今回の京表具展で拝見したような、高い技術と新しいセンスを持ち合わせた表具師の存在は大きなものがあります。
生活様式の変化で、表具と触れ合う機会も減ってきておりますが、作品を後世に残すためにも、これらの技術を継承していただきたいと願っております。