若冲イベント

明けましておめでとうございます。

明けましておめでとうございます。今年も「古美術 景和」をよろしくお願いいたします。

今年の景和の年賀状は、お正月らしく伊藤若冲の『鷹図』を使わせていただきました。

この『鷹図』は、印章や運筆の勢いや特徴から、若冲畢生の大作『動植綵絵』(宮内庁三の丸尚蔵館)を描いた時期と重なる50代前半頃と思われます。40歳を過ぎてから本格的に画家として活動し、85歳で亡くなるまで描き続けた若冲ですから、その画業で言えば比較的初期の頃の作品といえるでしょう。

若冲の水墨画の特徴である、背景をあまり書き込まず、空間の広がりを感じさせる良い構図です。
左上を眺め、何かのタイミングを図っているようです。この鷹がとまっているのは、枯木、あるいは岩のようですが、その向こうに生えている草が風になびいている様子が描かれています。

ちょうど、このシーンでは、強い風が吹いているのでしょう。強風の中、枯木で小休憩をとる鷹。左上を眺めているのは、風が止むのをうかがいながら、これから飛んで行く方向を見つめているのでしょうか。

若冲お得意の「筋目描き」も、鷹の羽の描写に遺憾なく発揮されています。墨と筆、紙との絶妙なコラボレーションが生む、この画期的な表現方法を、若冲は好んで描き、鯉や龍の鱗、菊の花弁などに多用していますが、ここでは、その羽の間に空気を含んだ鳥の身体の「ふわっ」とした状態を墨だけでとても上手に表現しています。

晩年には、この手間と根気の必要な「筋目描き」はあまり描かなくなりますが、50代初頭という、エネルギーに満ちあふれた若冲が描くこの『鷹図』では、「筋目描き」のテクニックを自分のものにしつつある若冲の腕前も確認できる、見ていて心がワクワクする作品です。
私は、この若冲の『鷹図』がとても気に入っています。
強風が吹くなか、飛び立つタイミングとその方向を見定める鷹の姿に、「いかなる逆境の嵐の中にあっても、風が止むのを待ち、新たな道に突き進めばいいんじゃない?」と若冲が言っているような気がします。

一富士二鷹三茄子。さらに、見ると元気が出る『鷹図』は、お正月にぴったりの絵ですね。

皆様にとって、今年も良い年でありますように。

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