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白隠の作品を集めた広島・福山の「禅と庭のミュージアム」へ行ってきました

昨日、広島・福山市にある神勝寺に今月初旬にオープンの「禅と庭のミュージアム」に行って参りました。ちょうど、茶道・上田宗箇流の講習会に参加の予定があり、広島市からの帰りに拝見しました。

神勝寺は、臨済宗建仁寺派の寺院で、造立は1965年。苔の美しい庭や蓮の咲く池があり、寺領には、茶室や浴室、食事処などもあります。
神勝寺が所有する220点もの白隠の禅画と墨蹟をガラスケース無しに間近に拝見できる「莊嚴堂」は、常時20~30点が展示され、白隠膳師の迫力ある墨蹟や、おおらかに、ときに繊細に描かれた禅画を、ゆったりとしたモダンな展示空間で、心置きなく鑑賞することができます。

今回は、ちょうどお昼頃に新勝寺に着きましたので、「五観堂」で、「神勝寺うどん」をいただきました。神勝寺うどんは、湯を張った大きな檜の桶に極太のうどんが入っており、ゴマ、生姜、ネギ、大根おろしの薬味と沢庵で食します。うどんは注文してから茹でるため、その間に、高野豆腐、かぼちゃ、切り干し大根の煮物を味わいながら、室外の庭をゆったりと拝見、20分ほど待ちます。ちょうど小雨が降っており、苔の緑が美しく、外界から離れた異空間のように思われました。

神勝寺うどんは、「持鉢」とよばれる、臨済宗の僧堂で使われる五枚組の器を使っていただきます。一番大きい器にうどんの出汁、二番目の器におかず、三番目の器に沢庵を入れます。箸は「雲水箸」で、手で持つ部分が非常に太く、長い箸です。雲水が食事をいただく前にお経を読む時の合図の拍子木代わりに使えるように、このような形状になっているそうです。

この食事処の「五観堂」の名称は、「食事五観之偈」という偈文にちなんでいます。

「食事五観之偈」とは、禅宗において食事の前に唱えられる偈文です。


一、計功多少 量彼来処  功の多少を計り彼の来処を量る
二、忖己德行 全缺應供 己が徳行の全欠を[と]忖って供に応ず
三、防心離過 貪等為宗 心を防ぎ過を離るることは貪等を宗とす
四、正事良薬 為療形枯 正に良薬を事とすることは形枯を療ぜんが為なり
五、為成道業 今受此食 成道の為の故に今この食を受く

そういえば、以前に、宿坊に泊まった際にも、朝夕食事の前に、この「食事五観之偈」を唱えた記憶があります。

さて。白隠の作品ですが、今回の展示には、白隠が何度も描いた代表的な画題や名号が多く見られます。白隠の代名詞とも言える『達磨』や、画面中ほどの大黒天の周りに、鼠の僧や一般庶民が集まり、左手に鍾馗や弁財天、恵比寿、布袋ら福の神たちが音曲を奏でている『鼠大黒』、耳に手を当て、岩に立つ可愛らしい猿と背景の松を薄墨で描き、鳥を濃墨でアクセントに描く『聞か猿』、永い修行にもかかわらず悟りを得られず,山を出る釈迦の姿を描いた『出山釈迦図』などなど。

いずれの作品も間近くから拝見でき、前述の『鼠大黒』などは、下書きの線もはっきり見え、300年以上経った今でも、白隠の作画への想いや息遣いを感じ取ることができます。

今年は10月18日より、東京国立博物館で、『臨済禅師1150年・白隠禅師250年遠忌記念 特別展「禅 ー心をかたちにー』が開催されます。

禅画墨蹟への注目も高まる今秋、広島の地で白隠禅師の作品をじっくり拝見できた良い機会でした。

今回は時間の関係で見られなかったのですが、「莊嚴堂」の横に、ロバが飼われているそうです。名前は「一休」。これは室町時代の臨済僧・一休宗純に由来するのでしょう。

ロバの一休さんとのご対面は、次回のお楽しみにしておきます。

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