20世紀を代表するイギリスの陶芸家、ルーシー・リー(1902〜1995)の、日本では10年ぶりとなる回顧展「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」が東京都庭園美術館で開催中です。

オーストリア・ウィーンの裕福な家庭に生まれたルーシー・リーは、ウィーン工芸美術学校在学中にろくろ制作に魅せられ、陶芸の道へ。
在学中からその才能を認められ、卒業後はブリュッセル万国博覧会やミラノ・トリエンナーレで金メダル、パリ万博で銀メダルを受賞するなど、若くして国際的な評価を獲得します。
しかし、1938年のドイツによるオーストリア併合を機にロンドンへ亡命。その後約50年にわたり、イギリスを拠点に活動を続けます。

ウィーンとは異なり、イギリスでの知名度は無く、ルーシー・リーの薄造りで繊細な作風は、当時主流だったバーナード・リーチ(1887〜1979)に代表される、東洋陶器の影響を受けた重厚な作風とは対照的で、なかなか評価を得られなかったようです。



第二次世界大戦中には作陶もままならず、洋服用の陶製ボタンの制作で生計を立て、戦後、国際展への出品を重ね、1950年代以降はイギリスを代表する陶芸家として高く評価されるようになります。
日本では60年代以降に作品が紹介され、1984年の個展を機に広く知られるようになったそうです。

今回の展覧会では、象嵌や掻き落としによる繊細な線描、独特の釉などを用いた、ルーシー・リーならではの魅力を伝える作品が数多く展示されています。

これまでルーシー・リーの作品は他の展覧会で数点目にした程度で、まとまった作品群を鑑賞するのは今回が初めてでした。

ルーシー・リーの作品は「都会的」「優美」と評されることも多いようですが、私が強く感じたのは、むしろプリミティブな生命力。
黒に近いマンガン釉はラスコーの壁画を思わせ、特徴的な薄造りも軽やかというよりは、青銅器のような重厚な存在感を放っていました。
とくに、1980年前後の作品からは、端正な美しさとは裏腹に、作者の燃え立つような闘争心さえ感じられました。

ルーシー・リーの作風を象徴する小さな高台の鉢には、「不安定の美」とでも呼びたくなる魅力もあり、実際に何かを盛れば倒れてしまいそうなほど微妙なバランスで成り立つそのフォルムは、見ていると少しぞわぞわします。

そういえば、天目台に載せていない天目茶碗にも同じような感情が湧きますね☆
会場には各時代の肖像写真も展示されていて、作品だけでなく、激動の時代を生き抜いた作家の人生にも触れられる、充実した内容の展覧会でした。
◎「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」
場所:東京都庭園美術館
期間:9/13(日)まで