茶懐石を作る時、メニューをあれこれと思案するのは楽しい作業です。
とくに煮物椀は、食材や器で季節感を表現しやすいので、ワクワクします。
豪華な食材を惜しみなく使うのも良いですが、個人的には、献立に精進料理の思想を取り入れるようにしています。
例えば、妙心寺・東林院の精進料理や、萬福寺の普茶料理など、禅寺でいただくものは、肉や魚は使っていませんが、おいしく満足感も高く、命あるものへの感謝をしながらいただく食事は、心を静かに、豊かにしてくれます。
若冲さんは、在家の僧として、“肉や匂いの強い野菜は食さなかった”と親しかった禅僧・大典は評しています。
日常生活で肉魚を一切断つ勇気はありませんが、若冲さんのお軸を掛けて楽しむ「若冲茶会」では、敬意を表して、精進懐石をおいしく提供できるよう努めたいです。
最近は、胡麻豆腐を鋭意試作中。胡麻の種類によって味が違うので、何回トライしても飽きません。
胡麻をすりこぎでゴリゴリと擦る時は、けっこう無心になれるので、これはまた別の意味で楽しい時間です。