最近、私のところに来ました若冲さんの「月に梅図」を掛けて、親しい人を招いて若冲茶会を行いました。
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この「月梅図」は、若冲さん40代の初期作品で、たっぷりとした墨で力強く左下から右上に向かって伸びる梅の幹が力強く、のびのびと描かれています。
幹から伸びる枝は、曲がったり伸びたりして、生き生きとした梅の花や蕾が描かれています。
空にはまんまるのお月さま。
薄墨で外隈された月は、寒い日の夜のぼんやりとした空気感をよく表しています。
梅の枝の一本がまっすぐ、月に向かっています。
よく見ると、枝の先は、お月さまにタッチしそうなほど接近。
円相のような月と、その月に触れようと伸びる梅の枝。
禅画でもよく描かれる円相は、欠けることのない無限、全ての始まりでもあり終わりでもある存在、悟りや真理、宇宙を表すともいわれています。
そう考えると、まっすぐ伸びる梅の枝は、宇宙の真理、そして、仏の慈悲の心に触れようとする若冲さん自身の姿なのかもしれませんね。
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干菓子は、お招きした友人のお手製。
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菊の干菓子は、若冲さんの「動植綵絵」のうち「菊花流水図」をイメージして作ったそうです。
主菓子は、近所の和菓子さんにお願いして、今の時期の果物と銀杏の練りきり。
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若冲茶会の時は、青物問屋「枡源」の主人だった若冲さんに敬意を込めて、野菜や果物の練りきりを必ず作ってもらいます。
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懐石は、向付に鯛の昆布締めとブロッコリー、さつまいもの味噌汁、宮城産無農薬自然農法のご飯、煮物椀はきくらげのしんじょうを作りました。
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若冲さんに想いを馳せながら、美味しく楽しい時間を過ごさせていただきました。
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◎伊藤若冲「月梅図」
制作:江戸中期(18世紀)