伊藤若冲

麦に雄鶏図

紙本墨画 江戸時代(18世紀)


◎解説

若冲の生涯の友であり、良き理解者でもあった相国寺の禅僧・大典顕常が撰した、若冲が51歳のときに相国寺の塔頭・松鷗庵に建てた寿蔵(先前に建てる墓)の碑文によると、最初、若冲は狩野派の技をなす者に習い、その画法を修得すると、宋元画を模写し、さらに直接に物を見て描くために庭に数十羽の鶏を飼い、その形状を観察して写生をしたそうです。若冲にとって“鶏”を描くことはライフワーク。画業初期の30代から最晩年の80代まで、生涯を通して描いています。40年以上の画業を通じて描いた鶏図の現存数は多いですが、その表現方法には時代を経るごとに変化と特徴があり、それらを確認することで、款記がない作品でも、おおよその制作時期を想定することはできます。

この作品は、画面左から描かれた麦の葉と茎、麦の穂を、雄鶏が見上げている作品です。麦の穂の一つは、穂先が欠けています。この雄鶏が食べたのでしょうか。特徴的なのは、頸の羽毛の表現です。水墨画で鶏を描く場合、「筋目描き」で表現することが多かった若冲ですが、「米斗翁行年七十五歳」の款記のある『群鶏図障壁画』(京都国立博物館)は、『動植綵絵』をはじめとする著色画の鶏で表現されたこまかな羽毛表現を、水墨画に取り入れて描いた記念碑的な作品です。同じく「米斗翁行年七十五歳」の款記のある著色画『仙人掌群鶏図』(西福寺)に描かれる雄鶏の羽根には、それまで水墨画で描かれた表現が使われています。

この「七十五歳」画の両作品に見られるように、それ以前は同じ画題でも水墨画と著色画で、大きく表現方法を変えていた若冲が、この時期、著色画の表現を水墨画に、水墨画の表現を著色画に採用し、お互いの垣根を取っ払うかのように、自由に表現を行き来していたことが分かります。この作品も、頸の部分の羽毛の表現が、彩色画のそれを採用していることから、七十代半ば頃の作品と想定されます。墨の濃淡だけで、鶏が持つ、つやつやとした羽根の美しさを表現する若冲の技術の高さと、水墨画でも如何なく発揮されるセンスの良さを感じる一枚です。この頸の羽毛の表現を見る作品は少なく、その意味でも貴重な作品と言えます。

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作家名

伊藤若冲

作品

麦に雄鶏図

作品番号

J-13

印章

「藤汝鈞印」(白文方印)
「若冲居士」(朱文円印)

時代

江戸時代(18世紀)

紙本墨画

本紙寸法

96.4✕31.4 cm

総丈

43.6✕184.8 cm

価格

売約済

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