今にもバシャンという水音が聞こえそう

 

ギョロッとした目をした鯉が、水しぶきを上げながら進む姿を描いた鯉図です。

人間っぽい鯉の表情には、波濤を越えて泳ぐ鯉の必死さが表れていて、クスッと笑ってしまいそうです。
鱗の表現には、若冲お得意の「筋目描」が使われ、頭部から腹部にかけて、墨の濃淡を付けています。

宙を舞う水滴は、鯉と同様、非常に躍動感があり、まるで生き物のようです。
木や岩などにも生命感と躍動感を感じさせる若冲ならではの表現がここにも生かされています。

絵のタッチと印象の種類・状態から、60代頃の作品でしょうか。
85歳で亡くなるまで、情熱を持って描き続けた芸術家の画業中期にあたる作品として、その伸びやかで自由な表現が楽しめます。

〈展覧会出品 履歴〉
●生誕300年 若冲の京都 KYOTOの若冲(京都市美術館)/2016年10月~12月
●江戸絵画名品展(ロシア モスクワ/国立プーシキン美術館)/2018年9月~10月

作家名 伊藤若冲
作品名 鯉図
時代 江戸時代(18世紀)
紙本墨画
本紙寸法 107 × 30 cm
総丈 198.5 × 42 cm
印章 「藤汝鈞印」(白文方印)、「若冲居士」(朱文円印)
付属 合箱
価格 売約済