若冲お得意の「筋目描き」で鱗を見事に表現

 

五月の青空を泳ぐ「鯉のぼり」のような大きくギョロリとした眼をした鯉が、水中を悠々と泳ぐ様を描いた作品。

若冲の鯉の作例はいくつかあり、頭部を描き、腹部が一度画面の外に出て、尾びれを描くという構図が大半ですが、この作品は、腹部もふくめて鯉の全体像が描かれており、若冲の鯉図には珍しい構図。

背景として、鯉の右下に水の流れと右下から左上に向かって浮遊する水草を略筆で描くのみですが、この水の流れと、体をくねらせる鯉のポーズが、この絵に躍動感を与えています。

頭部は濃墨で表現し、鱗、尾びれ、背びれなどの描写には若冲お得意の「筋目描き」(※)がふんだんに使われ、その表現の面白さを十分堪能できる作品です。

※筋目描き/吸水性の良い画牋紙に淡墨の筆を重ねて塗り、にじんだ墨の面と面の間が混じり合わず白い筋が残る特性を生かした画法。

 

 

作家名 伊藤若冲
作品名 鯉図
時代 江戸時代(18世紀)
紙本墨画
本紙寸法 80.1 ✕ 26.3 cm
総丈 161.0 ✕ 49.8 cm
印章 「藤汝鈞印」(白文方印)、「若冲居士」(朱文円印)
付属 合箱
価格 売約済