現在発売中の雑誌『Pen』(7/1号)の「BOOK」コーナーで、小説『若冲』(澤田瞳子著・文藝春秋)の書評を書かせていただきました。

著者の澤田瞳子さんは、2010年に『孤鷹の天』デビュー、翌年、同作で第17回中山義秀文学賞、2012年『孤鷹の天』で中山義秀賞、次作の『満つる月の如し』で第2回本屋が選ぶ時代小説大賞、第32回新田次郎文学賞を受賞する小説家で、同じく小説家の澤田ふじ子さんの娘さんです。澤田ふじ子さんには若冲を主人公にした短編小説『若冲燈籠』があります。親子で若冲、です。

さて。ミホ・ミュージアムの辻惟雄館長も『週刊文春』の書評欄で書かれていましたが、若冲に心の闇があるという設定で、懺悔や憤りなどネガティブな感情を中心に物語を組み立て、若冲の純粋な気持ちや生き物への愛情、ユーモアなどについて書かれていないことには、賛否両論があると思います。

一方、若冲の「作品」ではなく、若冲の「人物像」に焦点を当てた小説が書かれたことで、 若冲について、より多くの人が関心をもっていただける良い機会になることを願っております。