人間世界にも通じる、つがいの鶏のビミョーな関係

 

雄鶏が尾羽を高くあげて片足で立ち、少々興奮気味に顔を上にあげています。この雄鶏のアゴの部分が丸見えで、アゴのひだ(肉ぜん)がポチポチと描かれています。

羽根を広げて片脚を挙げ、正面を向き顎を突き出して興奮気味の雄鶏と、お尻を正面に向けて地面に伏せ、その雄鶏をあきれ顔で仰ぎ見る雌鶏という、二羽の行動や表情の対比、動と静の対比がユニークな作品です。

若冲の作例を見ますと、顔をグイーと上げたアングルでこのマンガのような鶏を描くのは、七十代に入ってからようです。襖絵で「斗米庵米斗翁行年七十五歳画」の款記ある「仙人掌群鶏図」(大阪・西福寺/重要文化財)や、障壁画で「米斗翁行年七十五歳画」の款記ある「群鶏図障壁画」(旧海宝寺/京都国立博物館)などに、同じく上を向いてアゴを見せた鶏を見ることができます。

熱愛する雄と冷静な雌という、人間世界にもありそうな関係を描いたこの作品ですが、鶏を擬人化して描いたのか、あるいは鶏の世界にも同じドラマが展開されているのか。
若冲さん本人に聞いてみたくなる楽しい一枚です。
画中にまかれた金砂子は、後の時代のものです。

作家名 伊藤若冲
作品名 双鶏図
時代 江戸時代(18世紀)
紙本墨画
本紙寸法 97.5 ✕ 29.0 cm
総丈 169.0 ✕ 39.5 cm
印章 「藤汝鈞印」(白文方印)、「若冲居士」(朱文円印)
落款 米斗翁
付属 合箱
価格 売約済