雑誌『Pen』のアラブ特集で、アラブの工芸について執筆しました。

アラブ=イスラムの美術というと、宗教施設での建築やコーランに見られる、厳格かつ秩序だった美しさを思い浮かべる人も多いと思います。

イスラム教の教義に則り、生活が成り立つアラブ地域には、宗教に基づく美しさに満ちています。

一方、宮殿や商業施設などの日常生活に使用される工芸品には、のびのびと自由な美の表現が各所に見られます。

古代ローマ文化とヘレニズム文化の影響を受けるアラブ地域では、陶器やガラス器、金銀などの象嵌など、高度な技術が発達し、多くの美しい工芸品が作られました。

金銀の輝きを陶器に表現しようとした、ラスター彩陶器や、人物や動物を表情豊かに表現した象嵌細工など、この地域で発達した工芸はたくさんあります。

ガラスの表面に金属色で彩色したエナメル彩も、アラブを代表する技法です。

豹がガゼルを追い、唐草文にウサギがかわいく鎮座する姿など、宗教美術とは違う、温かでたのしい表現に満ち溢れるアラブの工芸品の魅力にきっと驚かれるでしょう

東京国立博物館では、2018年1月23日より、「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」展が開催です。

アラブ地域の文化や美意識について、多くの気付きを発見できそうですね。

 

『pen』2018年2/1号(No.444)
特集:アラブは、美しい。
2018年1月15日発売/CCCメディアハウス