伊藤若冲

伊藤若冲「狗子図/賛:細合半斎(太乙離題)」

紙本墨画 江戸時代(18世紀)


◎解説

白色と黒色の二匹の子犬が、一部重なるように密着して描かれた作品です。白い子犬は右上を向き、身体をこちらに向けています。丸いボールのような耳に黒い首輪をして、細い線で毛並みが表現された、ふわふわの小さなしっぽが可愛く描かれています。一方の黒い子犬は、向こうを向き、後ろ姿を見せています。一見、「この黒い塊は何?」と思われがちですが、白い首輪と、頭の横についた丸い耳のシルエット、足袋を履いたような白い右前脚から、子犬の後ろ姿であることが分かります。若冲は、例えば水墨画の傑作『象と鯨図屏風』(MIHO MUSEUM)の象と鯨のように、白と黒を対象にして、ユーモラスに動物を描きますが、この『狗子図』も、白い毛と黒い毛、黒い首輪と白い首輪、黒い耳と白い前脚……、と「白と黒」の対比が楽しい作品です。また、動きのある白い子犬と後ろ姿の黒い子犬の「静と動」の対比も見逃せません。 白い子犬と黒い子犬の二匹を丸い円の中に構図するこの作品は、白と黒の勾玉模様が左右に入り込んだ「陰陽太極図」にも見えます。白と黒の子犬で「神羅万象、全てのものは陰と陽で成り立っている」ことを表したとしたら、若冲のそのセンスに脱帽です。 賛者は、江戸中期の儒学者で漢詩人の細合半斎(1727−1803)。若冲作品との関わりは、若冲が70代後半に蔬菜や昆虫を11メートルにも及ぶ絹の巻物に描いた『菜虫譜』(佐野市立吉澤記念美術館)の跋文を書いたことで知られます。細合半斎は、酒造家で文人画家、所蔵家、本草学者でもあった木村蒹葭堂(1736−1802)の婚姻の際の媒酌人もつとめ、若冲と親交の深かった相国寺の大展顕常(1719−1801)や池大雅(1723−1776)とも親しい人物です。若冲の当時の文化人ネットワークが想われる、貴重な作品です。

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作家名

伊藤若冲

作品

狗子図

作品番号

J-9

印章

「藤汝鈞印」(白文方印) 「若冲居士」(朱文円印)

時代

江戸時代(18世紀)

紙本墨画

本紙寸法

99.5 x 28.5 cm

総丈

163.0 x 41.0 cm